伝説の怪鳥
インチキ探検家のアノン氏は、探検隊を結成して、山に登った。そこには火を吐く怪鳥がいるという話だった。しかし、それは嘘だった。アノン隊長は、隙を見て、どこかで逃げるつもりでいたのだ。
ところが、逃げ道を捜す隊長を、大きな影が襲った。探検隊のみんなが見ている前で、本当に怪鳥が現れ、隊長をさらって行ったのだ。
アノン隊長は、高い岩山の上の、怪鳥の巣に投げ出された。
あっけにとられたアノン隊長を前にして、怪鳥は人間の言葉で説教するのだった。
「なぜ私を探しに来たのですか」隊長は小さな声で答えた。「いや、まさか本当にいるとは…」
「あなたたちが、二度とこの山に来ないのであれば、仲間のところに帰してあげます」
アノン隊長は言った。「もう、来ません」
そして隊長は、怪鳥によって仲間のもとに返された。しかし、元来が山師の気質を持つアノン隊長は、ここぞとばかりに自慢するのだった。「どうです。やっぱり怪鳥はいたでしょう」
しかし皆は言った。「でも火を吐かないですね。あなたの話では火を吐く怪鳥ということでしたが」
すると隊長は開き直って言った。「嘘じゃありませんよ。もっと近づいて見に行きましょう」
そして、探検隊は岩山に向かった。その道中、アノン隊長は、こっそりと山に火をつけた。そして、みんなに向かって叫んだ。
「怪鳥だ!火を吐いたぞ!」隊長は混乱の隙に逃げ出すつもりだった。しかし、そこへまたしても怪鳥が飛んできた。そして、驚くべきことに、怪鳥は口から水を吐いて、山火事を鎮火させたのだった。
隊長はやけになって言った。「どうです!また怪鳥がやって来ました」
しかし探検隊は言った。「吐いたのは水だ。火ではない。火はあなたがつけたんだ」
隊長は言った。「違いますよ。怪鳥が火を吐いたんですよ」
するとまた怪鳥が飛んできて、隊長をさらった。そして岩山の巣で説教をした。
「懲りない人ですね。なぜ帰らなかったのですか」
隊長は怪鳥を拝んで言った。「怪鳥さま。あなたは水を吐くのなら、火も吐くでしょう。どうか、疑い深い人たちに、見せてやってください」
「そうすれば、山を去るのですね」「はい、すぐにでも」
怪鳥は隊長を元に戻して、皆の前で火を吐いた。その火はアノン隊長のお尻についた。
お尻のズボンを燃やしながら、隊長は熱くて転げまわった。すると、怪鳥は口から水を吐き、お尻の火を消した。隊長はお尻丸出しのまま、ぐったりとしてしまった。
その後探検隊は山を降りた。隊長は恥ずかしさのあまり、今日のことを内緒にしてくれるように頼んだ。
みんなは快く認めて、笑いながら帰った。その後、隊長はインチキ探検の仕事から足を洗った。お尻の話が広まって、もうこの業界には残れなかったからだ。
その後アノン氏がどうしたのかは、誰も知らない。そして、そのあと誰が見に行っても、怪鳥は現れなかった。